井上ひさし『本の運命』

本の運命 文藝春秋、1997年4月
★感想メモ

  • とても楽しく読んだ。
  • 納得としてというより発見として、あー、こういう時代に生きたひとだったんだ、と思った。
  • 一番共感したのは「感想文を廃止せよ」(p.138)「いっそ「読書感想文」というのはやめて、読んだ本の要約を書かせるようにしたらどうかと思っているんです。」(p.139)というところ。私もすごく苦手で感想文というものに感想を書くことができなかったし、感想なんてないよ、と思っていたから。感じたことや思ったことを言葉で取り出すというのは、今でこそその回路が見えるようになったけれど、それでもなお、文章を書くことに抵抗のなくなった今でも、それほど容易なことではないと思う。
  • 本があまりに増えて床が抜けたというエピソードも圧巻。「(前略)ある日、本を紙袋一つ分買ってきて、仕事部屋にポンと置いた。その瞬間に、床がズルズルッと傾いていって、ドッカーンと落ちたんですね。いや、びっくりしましたけど、一方で、感動しました(笑)。」(p.73)笑っている場合じゃないだろうと思わずつっこみながら、笑ってしまった。
  • 「ただただ自分の生活時間に合わせて、分類などしないで写していく」のを「”超整理法”の逆です」(p.62)と書いてるところでは、まさにそれが”超整理法”だよ!と思った。(参照→野口悠紀雄『「超」整理法:情報検索と発想の新システム』 野口悠紀雄『「超」整理法 続』)「情報のポケットを一つだけにする、そしてそのポケットの中身を単純に時間順に並べる」というところなど、本当にそのまま”超整理法”で驚いた。
  • 映画を細かくメモして台詞も全部再現して完璧なシナリオを復元したというエピソード(p.85)に、ひょっこりひょうたん島のエピソード(脚本などはなくなってしまっていたけれど、熱狂的ファンの少年が全部メモしていて復元できたらしいという話)を思い出した。自分が虜になったように誰かを虜にする仕事をしたっていうのは本当にすごいことだと思うしかっこいい。そして、索引づくり(p.58)も書き抜き帳(p.59)もそうだけど、映画のシナリオを再現したのも(p.85)、ほしい本をカーボンの帳面に書いていくのが日記がわりになった(p.100)とかのくだりを読んでも、本当に記録屋なのだな、と思った。