SKOS入門 - SKOS Simple Knowledge Organization System Primer

W3Cワーキンググループ・ノート 2009年8月18日
原文:http://www.w3.org/TR/2009/NOTE-skos-primer-20090818/
和訳:http://www.asahi-net.or.jp/~ax2s-kmtn/internet/skos/note-skos-primer-20090818.html

★メモ

  • 1 はじめに
    • 本文書は、SKOS(Simple Knowledge Organization System)に関する規範的なリファレンスを提供する「SKOSリファレンス」*1の手引きである。
    • SKOSは、シソーラス、分類体系、件名標目表などの知識組織化体系(KOS)を表現するためのRDF語彙である。相互運用性を確保するため、単純化されたモデルとなっている。

  • 2 SKOS必須事項
      • ◆KOSを表現する際に最も一般的に用いられる語彙を紹介する。
      • ◆SKOSは、概念体系にKOS情報を含ませることについては限定的にしかサポートしていない。
    • 2.1 概念
      • クラスskos:Concept:ある資源が概念であると言明できる。URI*2により概念を一意に特定し、プロパティrdf:typeを用いて、URIが示す資源がタイプskos:Conceptに属すことを示す。
    • 2.2 ラベル
      • プロパティskos:prefLabel、skos:altLabel、skos:hiddenLabel:ラベル付けする。同じリテラルに対してこれらのプロパティを重複して用いることはできない。
      • skos:prefLabel:優先字句ラベル。言語タグによって特定の言語に範囲を限定することができる。ただし、このプロパティは、言語タグ1つにつき1つしか持てないことに留意する。
      • skos:altLabel:代替字句ラベル。同義語、類義語、略語、頭文字語などに用いることができる。
      • skos:hiddenLabel:非表示字句ラベル。スペルミスを別途含みたいときなどに用いる。
    • 2.3 意味関係
      • プロパティskos:broader、skos:narrower、skos:related
      • skos:broader:ある概念が別の概念より広義(より一般的)であると言明するために用いる。
      • skos:narrower:ある概念が別の概念より狭義(より具体的)であると言明するために用いる。
      • skos:broaderとskos:narrowerは、推移的とは定めていない。(非推移的という意味ではない。)インスタンス―クラス関係や、部分―全体関係などの階層関係の形式の区別もカバーしない。
      • skos:related:連合関係を言明するために用いる。推移的とは定めていない。
    • 2.4 記録ノート
      • プロパティskos:note:概念体系を利用する人間向けの注記。skos:scopeNote(概念の使い方の制限)、skos:definition(概念が意図する意味の説明)、skos:example(概念の使用例の提供)、skos:historyNote(概念の意味や形式に関する重要な変更点の記録)がある。
      • KOSの管理者や編集者向けに、skos:editorialNote(編集作業中、将来変更可能性がある、など、維持管理の補助となる情報)、skos:changeNote(概念に関する細かな変更点の記録)がある。
    • 2.5 概念体系
      • クラスskos:ConceptScheme:概念体系(分類表、シソーラスなど)を表す。
      • プロパティskos:inScheme:その概念を含んでいる概念体系にリンクする。
      • プロパティskos:hasTopConcept:概念体系を、その中で最も一般的な概念にリンクする。
  • 3 セマンティック・ウェブにおけるKOSのネットワーク化
      • ◆既存の概念間の意味関係を成立させるための概念体系のリンクに用いられる語彙を紹介する。
    • 3.1 概念体系のマッピング
      • プロパティskos:closeMatch:2つの概念は取り替えて使えるほど似ていることを示す。しかし推移的とは定義されておらず、2つの体系以外に広がることを防いでいる。
      • プロパティskos:exactMatch:2つの概念は取り替えて使えるほど似ていることを示す。skos:closeMatchより高い近似性を意味するため、より広い体系にまたがって利用できる。
      • 2.3項の意味関係の類似性は、プロパティskos:broadMatch、skos:narrowMatch、skos:relatedMatchを用いて指定することもできる。
    • 3.2 概念体系の再利用と拡張
      • プロパティskos:inScheme:既存の概念を再利用するために用いる。
    • 3.3 主題のインデキシングとSKOS
      • 任意の資源をskos:Conceptに関連づけたい場合は、(SKOSにはないため)他の語彙を使用する。

  • 4 高度なSKOS: KOSがシンプルでなくなった場合
      • ◆高度な表現を必要とする場合について
    • 4.1 概念の集合
      • ラベル付き集合:クラスskos:Collectionを用いて概念集合構造をモデル化する。このクラスのインスタンスは、プロパティskos:memberを用いて記述する。
      • 順序付き集合:クラスskos:OrderedCollectionとプロパティskos:memberListを用いて集合内の概念の順序を記述する。
      • 集合によって、アプリケーションが操作しなければならない表現は複雑になるものの、意味の正確さの観点から、集合を用いることは有益である。
    • 4.2 高度なドキュメンテーション機能
      • SKOSでは概念に様々な注釈をつけることができる。目的語の位置で使用できる資源の値域は、SKOSリファレンスでは制限していない。
      • RDFリテラルとしての記述:シンプルなRDFリテラルを目的語とする。
      • 関連資源記述としての記述:非リテラルRDFノードを目的語とする。作成者や作成日など。
      • ドキュメントの参照としての記述:ドキュメントのURIを目的語とする。
    • 4.3 ラベル間の関係
      • SKOSの字句ラベル付けプロパティは、RDFリテラルを目的語に取るため、ラベル間の関係を示す(ラベルを主語として情報を付与する)ことができない。そこでSKOSではラベルをRDF資源として扱えるよう拡張したSKOS-XLで、クラスskosxl:Labelを導入している。
      • skosxl:Labelインスタンスは、プロパティskosxl:prefLabel、skosxl:altLabel、skosxl:hiddenLabelを用いて概念を関係づけることができる。また、skosxl:labelRelationでリンクできる。
    • 4.4 概念結合
      • KOSのインデキシングには概念の結合が用いられることが多いが、SKOSには、結合した概念を表現する方法がない。この課題については先送りにし、拡張パターンを有機的に使えるようにすることを決定した。
    • 4.5 推移的な階層
      • 推移的であることを示す必要がある場合のために、プロパティskos:broaderTransitiveとskos:narrowerTransitiveがある。skos:broaderTransitiveはskos:broaderのスーパープロパティである。
    • 4.6 表記法
      • 概念への主なアクセス手段として用いられている見出しなどの表記法を表すことができる。
      • プロパティskos:notationを用いて概念にRDF型付きリテラルを付与することができる。
      • 言語に依存しないラベルの場合は、skos:prefLabelなどのラベル付けプロパティを用いる。
    • 4.7 SKOSモデルの専門化について
      • SKOSは、異なるKOSモデルを共通化させるものとして機能することを目指している。より細かな、特定のコミュニティのニーズに合うような拡張が必要な場合は、既存のSKOS語彙をより特定化することで対応できる。

  • 5 SKOSとその他のモデル化アプローチとの組み合わせ
      • ◆他のモデル化アプローチ、特にOWLと連携させて用いることをアプリケーションが求める場合に生じる問題を扱う。
    • 5.1 SKOS以外でのラベルの使用
      • 型がskos:Conceptではない資源へのラベル付けにSKOSラベル付けプロパティが使える。
    • 5.2 SKOSの概念とOWLのクラス
      • skos:ConceptはOWLのクラスなので、そのインスタンスである概念は、OWLの個体である。
      • SKOSの概念をOWLのクラスとして扱えるべきか否かは、SKOSでは決めていない。
      • OWL-DLの制限により、SKOSの概念をOWLのクラスとして扱うことはできない。
      • 進行中のOWLの改定での何らかのメタモデル化により、SKOSの概念をOWLのクラスとして扱えるようになるかもしれない。
    • 5.3 SKOS、RDFデータセットよび情報包含
      • SKOSのステートメントの来歴や所有権に関する情報は、現時点ではSKOSの範囲外である。
      • 名前付きグラフやRDFデータセットの使用などの解決策が提案されている。

*1:http://www.asahi-net.or.jp/~ax2s-kmtn/internet/skos/REC-skos-reference-20090818.html

*2:ウェブ上での参照解決を可能にするHTTP URIの使用を推奨する。