価値主張とクリティカルシンキング

  • 価値主張でのクリティカルシンキング:与えられた条件下で「少しでもましな答え」を出すこと
    • なんらかの価値基準に照らして評価を下している
  • 分厚い記述(thick description):豊かな内容を伴った描写
  • 薄い記述(thin description):ある言葉のさす対象についての骨組みだけの描写
  • 実践的三段論法である以上、その大前提にも別のより一般的な価値主張が使われることになり、それもやはり実践三段論法で、というように無限に続くことになる。
  • 倫理的懐疑主義:自分や他人の行動を縛ったり導いたしするために使われるもので、それが間違っているとわれわれの生活に大きな影響があるため、とくに大きな関心の対象となる。
    • ピュロン主義の倫理的懐疑主義:地域の習慣や思想上の立場によって考え方が大きく異なる(同性愛、売春、近親婚、一夫一妻制、姦通、入れ墨、人肉食、犬食etc...)問題について、善悪の問題について判断停止をするべきだと主張。
    • 倫理的ルールの普遍性:どの文化でも?
    • 倫理的ルールの合理性:社会契約→突然殺されはしない、という安心。
    • 懐疑主義を回避する:今われわれが受け入れている倫理規範をそのまま受け入れて良い。極端な方法的懐疑を実践すると、事実についての主張で受け入れていいものが何も残らなくなる。
    • 立証責任は誰にあるのか
  • 価値主張のクリティカルシンキング
    1. 基本的な言葉の意味を明確にする。
      • 薄い記述は、どういう分厚い記述が受け入れ可能かを決定するための出発点としての役割を果たす。
      • 薄い記述を厚くするやり方
        • 薄い記述を満たすものについて調べる
        • 薄い記述にさらに新しい条件を付け加える
    2. 事実関係を確認する。
      • 一見、価値観で対立しているように見える二人が、よく論じ合ってみると、実は基本的な価値判断については一致していながら事実の問題について対立していることがよくある。これに気付けば、意見の調停に際して、見当はずれの努力をするのは避けられるだろう。
    3. 同じ理由をいろいろな場面に当てはめる。
      • 普遍化可能性テスト:大前提を批判的に検討する。
    4. 出発点として利用できる一致点を見つける。
      • 反照的均衡:すでに一致できているところにはできるだけ手を付けず、それでも不整合が生じたら、できるだけ無理の少ない方向で修正を加える。
  • 「生きる意味」の哲学的分析
    • 「なんらかの価値ある仕方で自分を超えること」(サデウス・メッツ)
  • 自然さからの議論:実質的には、道徳的な主張→平行線をたどっているときにはこれの可能性がある。

→価値観や趣味の問題とされている話題についても、いろいろと吟味できる項目はたくさんある。

  • 温暖化論者と温暖化懐疑論
    1. 不確実な状況における推論の問題
      • やわらかい反証主義:新しい実験や観察につながるような生産的な言い抜けならばよしとする。
      • 確率的な推論:統計的な証拠や確率を使った推論
      • 条件が整っている場合には、権威からの議論をよしとする
    2. 立場の違いに起因する問題
      • 価値観の違いの擦り合わせ
      • 実践的三段論法によって、お互いの価値判断の背景にある大前提(より一般的な価値判断)を小前提(大前提と結論を結ぶ事実判断)を特定し、意見の調整を測る。
      • 価値に関するクリティカルシンキングでは「よりましな解答」はあっても「正解」はない
      • 通約不可能性:二つのグループがまったく違う世界観で世界を見るために基本的な出来事でさえも違って見え、そのために話が通じなくなるという状態
      • 議論の再構成においても無理に合理的な枠に押し込めるのではなく、まずは相手の言い方に忠実に再構成する
      • 言葉の明確化:情報発信する側のクリティカルシンキングについての考え直し
      • 互いに理解を深め、両者のものの見方を統合した一段レベルの高い視野を獲得するのが理想→地平の融合
      • 文脈の差が生じるのは、そもそも何のためにその問題について論じているのかについての食い違いがある場合が多い。
      • 目的とデータ処理の仕方の間には合理的な関係がなくてはならない
    3. クリティカルシンキングそのものの倫理性