今村仁司『マルクス入門』
マルクス入門 (ちくま新書)(ちくま新書533、筑摩書房、2005年)
*序論のまとめ
- マルクス解釈の三類型
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- 経済中心史観
- 実践的主体論
- 構造論(関係論)
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- 〈1〉経済中心史観の抱える認識面での混同
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- 社会のすべての現象(上部構造)を経済的土台(下部構造)「から発生させる」という思想類型。
- 「発生的理論」による混同=経済がもっている社会的位置が基礎的であるという正当な認識(事実において先になるもの)と、社会形成の筋道を論理的に説明する論理との混同。経済が社会の存続にとって重要であるからといって、それが社会の「発生的論理」になるわけではない。
- マルクス後の弟子たちによる歪曲
- 社会のすべての現象(上部構造)を経済的土台(下部構造)「から発生させる」という思想類型。
- 〈2〉ルカーチによる実践的主体性論への展開
- 戦後のフランス実存主義とマルクス
- 〈3〉構造論=社会関係のアンサンブル(関係論)
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- 関係する行為の束が関係的構造を形成し、構造の中で主観と客観が形成される。
- 主観も客観もそれ自体で単独に存在するのではなく、両者は構造の結果(構造によって生産されたもの)である。
- 個人が先にあるのではなく、社会や関係が先にある。個人は社会的個人である。
- 諸個人のつきあいを「社会関係」とよぶなら、この社会関係は独自の法則性と秩序をもっている。法則や秩序をもつ組織体を、構造とよぶ。その観点から構造の科学が出発する。
- マルクスの科学性という問い
- アルチュセールがマルクス主義思想史上はじめて、マルクスにおける科学性を問題にした。
- マルクスは「真理基準」*4なしには人間の認識は科学になりえないことを自覚していた。
- 認識生産過程としての科学的実践:最初の出発点にある曖昧模糊としたイデオロギー的観念を批判的に解体して、その中にある真実を取り出し、新しい概念へと変換するのだが、その結果である概念は最初の観念の本質的なものを保存しつつ概念の構成要素にしている。
- →ヘーゲルが主張した認識の円環的構造。
- 歴史的時間の概念
- 構造は歴史的時間の中におかれてはじめて動的な現実性を持つ。
- 歴史的時間の中で動く社会構造こそが本来の叙述の目標である。
- 歴史的時間の概念をいかに構成するかが、マルクスをどう理解するかを左右する。
- 複数の時間性
- 社会と歴史の科学的認識は、各領域自体が複数の時間性を持つことを認識することから初めて、ついで各領域の独自の運動様式を確認しつつ複数の領域の時間的連関、すなわち異質時間相互の分節化と編成を分析するのではなくてはならない。
- アルチュセールの実践的イデオロギー
- 実践的:ひとが社会の中で生きるときに「生き抜いてしまっている」観念形態、いわば肉体の中に刻み込まれる無意識的観念。
- 人間の存在条件そのもの。人間が存続するかぎり存続する(=永遠的)。