緑川信之『本を分類する』

http://id.ndl.go.jp/bib/000002549112
緑川信之著『本を分類する』勁草書房、1996年10月
★感想メモ

  • 理論としての説明が実践を想定した具体例とともにていねいに書かれている。
  • あらゆる分野の知を対象とした分類体系を作るってほんと大変なことだ…と気が遠くなるような気持ちになった。

★メモ

  • p.7: 本書の最終目標は個別の分類法の紹介ではなく、分類とは何か、どうすれば適切な分類ができるか、を考えるための基礎を提供すること
  • p.21-22: きわめて例外的な生物のために区分肢を用意しておくのは実用的ではない
  • p.22: 理論的には区分の原則は守られるべきであるが、実用上はむしろ区分の原則を破っても単純な区分にした方がよい場合もある。
  • p.23: 区分原理を独立のものとして掛け合わせると多次元構造になる。(略)多次元構造の場合はそれぞれの区分原理が独立なので適用順序は問題にならない。
  • p.201: DDCの「記号の保全(integrity of numbers)方針」:細目をつけ加えることはあるが、分類体系全体の変更は行わないという方針
  • p.202: DDCの「フェニックス(phoenix)」避けがたい必要性と要求が生じた部分については前の版をほとんど考慮に入れずに徹底的に改訂することを承認するという方針。第20版で「全面改訂(complete revision)」と名称が変更された。
  • p.203: 書架分類は文献を書架上に配列するための分類で、書誌分類は書誌、目録、索引、抄録などに収録するための分類
  • 索引:探索の手掛かりを増やす、関連項目を集める。
  • DDC、UDC、NDC、CC
    • DDCを基に、UDCとNDCが独自展開。
    • DDCLCC、NDCは階層構造。
    • コロンは多次元構造。ランガナータンによる。ほとんど使われていないが理論的意義がある。
    • UDCは階層構造と多次元の併用。
    • LCCとNDCは配架目的。
    • UDCは細分化された領域を扱う文献にも適用でき、書誌・索引DBにも使える。
  • DDC【デューイ十進分類法(Dewey Decimal Classification)】
      • 構造:階層構造
      • 配列:ハリスの分類を基礎に主類を配列している。
      • 表示:合成表示
      • 記号:純粋記号法で十進のアラビア数字
      • 索引:相関索
    • 本表:Schedules
    • 補助表:Tables
    • 関索引:Relative index DDCの索引言葉の音順で探索できる。学問分野(discipline)に基づく分類体系と主題(subject)を結び付けるから「相関」
    • 利用の手引:Manual
    • 主類:main classes 0-9の区分肢
    • 綱:divisions 主類を区分した区分肢
    • 目:sections 綱を区分した区分肢
    • 細目:subsections 目以降の区分肢
    • 補助表1:共通細目 Standard subdivisions
    • 補助表2:地理・時代 Geographic areas, historical periods, persons
    • 補助表3:文学形式細目 Subdivisions for the arts, for individual literatures, for specific literary forms
    • 補助表4:言語細目 Subdivisions of individual
    • 補助表5:民族・人種・国民集団 Recial, ethnic, national groups
    • 補助表6:言語 Languages
    • 補助表7:人物 Groups of persons
    • 純粋記号法 pure notation 1種類の記号体系だけを用いる方法(DDCはアラビア数字のみ)
    • 包括記号:comprehensive number
    • 学際記号:interdisciplinary number
    • 優先表:table of preference 複数の主題を扱っている文献をどこに位置づけるか指示する手段
    • 本来は1桁や2桁の記号でもダミーの0を補って3桁にする。
    • p.67: ここで注意しなければならないのは、0の数である。すでに指摘したように、530(物理学)の末尾の0はダミーで、実際は53の意味である。したがって、もし図2-17のように指示がでていなかったとすると、合成は次のようになる(530.7)しかし、530.7はすでに本表中に別の項目として使われている。つまり、530.7は物理学で用いられる装置のことであり、これを物理学教育とすることはできない(合成された記号よりも本表にあるが優先される)。そこで、図2-17のように指示を出して0をもうひとつ増やし、530.7としているのである。この0がいくつ必要かは合成する場所による。たとえば、026を見ると、補助表1の使い方が指示されている。この場合は、本表の基本記号は026.00で、たとえば、これに補助表1の03を合成すると026.0003(特定主題図書館の事典)が得られる。
        • 337 国際経済
        • 337.4 ヨーロッパの経済政策
        • 337.4052 日本に対するヨーロッパの経済政策
        • 026.61 医学図書館
        • 026.78 音楽図書館
    • 記号の桁が短くて済むよう、階層構造をときどき破っている。
  • LCC【米国議会図書館分類法(Library of Congress Classification)】
      • 構造:階層構造
      • 配列:カッターの展開分類法(Expansive Classification: EC)を基礎に配列している。
      • 表示:合成表示
      • 記号:混合記号法でアルファベットと数字
      • 索引:主類ごとのみ(全体の索引はない)
    • 主類:main class 知識の全分野を20に区分。
    • 第2次区分以降の区分肢の配列はマーテルの7ポイント(Martel's seven points)の原則に依拠している。
    • 合成には、カッター記号、内部表、補助表、本表の別の部分、が用いられる。
        • HD2336(各国の家内産業)+.J3(日本)=HD2336.J3(日本の家内産業)
        • HD2356(各国の巨大産業)+.x2(.xに各国のカッター記号を代入。カナダは.C2→.C22でカナダの一地方)=HD2356.C22(カナダの一地方の巨大産業)
        • HD2356.C22+M6(モントリオールのカッター記号)=HD2356.C22M6(モントリオールの巨大産業)
    • 混合記号法:mixed notation 複数種類の記号体系を用いる方法
    • 万進法。LCCでは1-9999の数字がそれぞれ意味を持つ。
    • ただし、小数点以下の数字は十進法。
    • 階層構造の表現は、レイアウトで示している。
  • CC【コロン分類法(Colon Classification)】
      • 構造:多次元構造(だが、各次元の中は階層構造)
      • 配列:具体性減少の原則による
      • 表示:合成表示
      • 記号:混合記号法でアルファベット、ギリシャ文字、数字
      • 索引:アルファベット順に基本主題、基本主題のもとでのファセット、分類記号を示す
    • ファセット:Facet 基本的な区分原理、またはそれに基づく区分肢の全体
    • アイソレイト・フォーカス:Isolate Focus 基本主題以外のファセット
    • 基本主題:Basic Subjects
    • パーソナリティ:Personality Isolates 主語みたいな
    • マター:Matter Isolates 目的語みたいな
    • エネルギー:Energy Isolates 述語、動詞、みたいな
    • 空間:Space Isolates
    • 時間:Time Isolates
    • 言語:Language Isolates
    • 前置共通細目:Anteriorising Common Isolates
    • 後置共通細目:Posteriorising Common Isolates
    • ファセット式:facet formula 各基本主題に固有。用いるファセッとと連結方法を定めた式。
    • レベル:Level 階層関係を表現
    • ラウンド:Round 同じ階層で同じ種類のファセットが出てきたときに区別するための手段。
    • ファセット内関係:Intra-Facet Relation ファセット内の複数の区分肢の関係
    • アレイ内関係:Intra-Array Relation ファセット内関係の中でも、ファセット内の階層構造の第2次区分以降において同じ上位概念ンをもつ区分肢どうしの関係
    • フェイズ関係:Phase Relation 基本主題ファセットにおける複数の区分肢の関係
    • 一般的関係:General
    • 偏重関係:Bias
    • 比較関係:Comparison
    • 差異関係:Difference
    • 影響関係:Influencing
        • 「市立図書館における参考図書の分類」
          • 基本主題:図書館学 →ファセット式は 2[P] ;[M] :[E][2P]
          • パーソナリティ(,[P]):市立図書館 →22 における
          • マター(;[M]):参考図書 →47 の
          • エネルギー(:[E]):分類 →51
          • 第2レベルのパーソナリティ([2P]):(当該の概念が含まれていないので区分は行わない)
          • →222 ;47 :51
        • 「図書館のレファレンスサービス」
          • 基本主題:図書館学 →2 →ファセット式は 2[P] ;[M] :[E][2P]
          • パーソナリティ(,[P]):(図書館の種類が限定されていないので区分は行わない)
          • マター(;[M]):(当該の概念が含まれていないので区分は行わない)
          • エネルギー(:[E]):レファレンスサービス →7
          • 第2レベルのパーソナリティ([2P]):(当該の概念が含まれていないので区分は行わない)
          • →2 :7
        • 「21世紀の日本の大学図書館
          • 基本主題:図書館学 →2 →ファセット式は 2[P] ;[M] :[E][2P]
          • パーソナリティ(,[P]):大学図書館 →34
          • マター(;[M]):(当該の概念が含まれていないので区分は行わない)
          • エネルギー(:[E]):(当該の概念が含まれていないので区分は行わない)
          • 第2レベルのパーソナリティ([2P]):(当該の概念が含まれていないので区分は行わない)
          • 空間(.[S]):日本 →42
          • 時間('[T]):21世紀 →P
          • →234. 42 'P
    • 配列は、基本主題、具体的なファセット、抽象的なファセット、の順
    • 各ファセットに対応する連結記号を定め、原則的な合成方法も指定。
    • 複合主題の位置づけが容易で理論的に重要な分類法だが、合成規則が複雑すぎて実用性に欠ける
  • UDC【国際十進分類法(Universal Decimal Classification)】
      • 構造:階層構造と多次元構造の併用
      • 配列:主標数のあとに共通補助標数を合成する、複数の共通補助標数があるときは言語の共通補助標数を最後に合成する
      • 表示:合成表示
      • 記号:純粋記号法でアラビア数字
      • 索引:日本語とアルファベットでそれぞれ用意されている
    • 標数、分類記号:Class number
    • 共通補助標数DDCの補助表に相当するもの。主標数のどこにでも適用できる。
    • 独立性共通補助標数:主標数と合成されなくても意味を持つ共通補助標数
    • 従属性共通補助標数:主標数から独立しては使えない共通補助標数
    • 固有補助標数:主標数を階層構造的に細分するために使う。特定の主標数にのみ適用できる。
        • 「英語で書かれた日本の物理学に関する辞典」
          • 物理学 →学問分野 →53
          • 日本 →場所 →(520)
          • 辞典 →形式 →(03)
          • 英語 →言語 →=111
          • → 53 (520) (03) =111
        • 「図書館学のための数学」
          • 標数 02(図書館・図書館学)
          • 標数 51(数学)
          • → 02 :51
        • 「英語で書かれた19世紀イギリスの天文学に関する書誌」
          • 標数 52(天文学
          • 共通補助標数e (410) (イギリス)
          • 共通補助標数g "18" (19世紀)
          • 共通補助標数d (01) (書誌)
          • 共通補助標数c =111 (英語)
          • → 52(410)"18"(01)=111
    • 1桁や2桁の記号は、ダミーの0を補うことなくそのまま用いる。
    • UDCでは、ひとつの主題に対してひとつの記号を完全に一義的に決定することはできない。
    • 合成は、多次元構造的な合成表示と階層構造的な合成表示が行われている。
    • 多次元構造的な合成は、主標数と各独立性共通補助標数の間での合成と、主標数どうし、または同じ種類の共通補助標数うしの合成がある。
    • 階層構造的な合成には、主標数と従属性共通補助標数の合成、主標数と固有補助標数の合成、平行細分、の3つの方法がある。
    • 固有補助標数は、主標数の項目ごとに特定の(固有の)記号が定められている。テンゼロ(.0)で始まるテンゼロ固有補助標数、ハイフン(-)の次にゼロでない数字で始まるハイフン固有補助標数アポストロフィ(')に続けるアポストロフィ固有補助標数の3種類がある。
    • 平行細分は、「〜と同様に細分」という指示に基づく方法。
  • NDC【日本十進分類法(Nippon Decimal Classification)】
      • 構造:階層構造(DDCに基づいている)
      • 配列:カッターの展開分類法を基礎に配列している。
      • 表示:合成表示
      • 記号:純粋記号法で十進のアラビア数字
      • 索引:相関索
    • 9版
      • 一般補助表I :形式区分
      • 一般補助表I-a:地理区分
      • 一般補助表II :海洋区分
      • 一般補助表III :言語区分
      • 一般補助表IV :言語共通区分
      • 一般補助表V :文学共通区分
        • 414(幾何学)+033(辞典)→ 414.033(幾何学辞典)
        • 420(物理学)+033(辞典)→ 420.33(物理学辞典)
        • 332(経済史)+03(参考図書)→ 332.003(経済史の参考図書)
        • 532.09(原子力産業)+02(地域的扱い)+1(日本)→ 539.09021(日本の原子力産業)
        • 016.2(公共図書館)+33(イギリス)→ 016.233(イギリスの公共図書館
    • 知識の全分野を1-9に区分、どれにも入らないものを0(総記)とする。
    • 第2区分以降では、総記はさらに細分した形でしか現れない(ので0で終わる記号は使われない)。
    • 本来は1桁や2桁の記号でもダミーの0を補って3桁にする。
    • 合成の再は、すでに本表に存在する記号と重複しないよう気を付ける必要があるという、DDCと同様の注意事項がある。